ブスバーの選定方法とその事例
ブスバーとは、主に配電盤や制御盤に電源を各部分に接続する導体棒のことをさします。
英語表記では、"bus bar"となるため、日本ではブスバーやバスバーの2つに発音されることがあります。
また、素材に銅を使用することから"銅バー"とも呼ばれています。
大容量の電流を分岐する際にケーブルや電線を用いるのではなく、ブスバー(バスバー・銅バー)を活用することで効率的な電源供給をすることができます。
メインのブレーカにブスバーを接続することで、高さが2000mmを越えるような制御盤でも盤全体に大容量の電源を分岐することができます。
その分岐方法もビスで固定するだけのため、レイアウトの自由度も出すことができます。
ブスバー簡易選定ツール
ブスバーの選定について
ブスバー(バスバー、銅バー)に流すことができる定格電流(連続して通電でき,安全に使用することができる電流)は、JISC8480:2016によって定められる「帯状導体の電流密度」から算出することができます。
JISC8480:2016の「帯状導体の電流密度」では、以下の通り、630A以下の定格電流に対する電流密度(断面積1mm2あたりに流れる電流値)の上限値が規定されています。
基準定格電流(A) | 電流密度(A/mm2) |
---|---|
125 以下 | 3.0 以下 |
125 を超え 250 以下 | 2.5 以下 |
250 を超え 400以下 | 2.0 以下 |
400 を超え 630以下 | 1.7 以下 |
また、表1と以下の式より、断面積と電流密度の対応表が作成できます。
断面積(mm2) | 電流密度(A/mm2) | 定格電流(A) |
---|---|---|
41.666... 以下 | 3.0 以下 | 125 以下 |
100 以下 | 2.5 以下 | 250 以下 |
200 以下 | 2.0 以下 | 400 以下 |
370.588... 以下 | 1.7 以下 | 630 以下 |
表1および表2より、定格電流からブスバーの必要断面積の算出、および、ブスバーの断面積から定格電流の算出が可能です。
なお、「帯状導体の電流密度」の規定は導電率96%IACS以上の導体を使用することを条件としておりますが、JISH3140:2018の「導電率」で規定されている通り、一般的にブスバーに使用される銅(合金)の導電率は97%IACS以上となっております。
また、上記の規定から断面積や定格電流を算出する際、以下の点に留意が必要です。
- 材料の面取り及び成形のための電流密度増は+5%まで許容される
- ブスバーの途中にねじ穴の類があっても、その部分の断面積の減少が1/2以下である場合は、これを考慮しなくてもよい
- 分電盤外部の周囲温度40℃を基準とすると、ブスバーの温度上昇限度は65Kであり、JISC8480:2016で規定された試験でこれを満たしている限り電流密度を考慮しなくてもよい
ブスバーの簡易選定方法
定格電流からブスバーの必要断面積を求める
「ブスバーの選定について」 の表1と以下の式からブスバーの必要断面積を求めることができます。
ここで、電流密度の上限値は表1の通り、定格電流の値によって変動します。
例えば、定格電流を流すブスバーの必要断面積を求める場合、まず電流密度の上限がに決まります。 これらをそれぞれ代入すると、となります。
ブスバーの断面積から定格電流を求める
「ブスバーの選定について」 で紹介した表2と以下の式からブスバーに流すことができる定格電流を求めることができます。
ここで、電流密度の上限値は表2の通り、断面積の値によって変動します。
例えば、ブスバーの断面積がである場合の定格電流を求める場合、まず電流密度の上限がに決まります。 これらをそれぞれ代入すると、となります。
また、断面積がである場合、同様に電流密度の上限をとして計算すると、定格電流は、となりますが、これは断面積がの場合のよりも小さい値になってしまっています。 この場合、断面積に流すことができる定格電流はとなります。
技術・参考資料
日本産業標準調査会により公開されている、以下の規格を根拠としています。- JISC8480:2016
- JISH3140:2018